千代田区の神保町に突然現れる、まるでタイムスリップしたような喫茶店がある。地下にあるこのお店は、明るい街並みとは一転して、暗めの照明と木製の家具が落ち着いた空間を作り出している。初めて訪れたときは、階段を降りるたびにほのかなコーヒーの香りが漂っており、なんだか不思議な感覚に。店内にはジャズが静かに流れ、カウンター席やオープン席が整備されていて、誰もが心地よく過ごせる雰囲気だ。このお店の魅力は、なんといってもコーヒーの味。トロワブレンドは酸味が少なく、苦味も控えめで飲みやすく、ハイブレンドはガツンとした苦味が特徴。どちらも自分の好みに合わせて注文できるのが嬉しい。特にトロワブレンドは、朝の出勤前や午後の休憩にぴったりで、自分にとって定番のドリンクの一つだ。
メニューは写真付きのメニューブックで、ドリンクだけでなくフードも豊富。人気のグラタントーストや小倉バタートーストは、どちらも名物として知られている。グラタントーストはホワイトソースとチーズ、ハムがたっぷり乗っており、パンの香ばしさととろける食感が絶妙。小倉バタートーストは、甘味と塩味のバランスが絶妙で、コーヒーとの相性も抜群。この二つは、カフェに来たなら必ず注文したい一品だ。また、オーレグラッセやロイヤルミルクティーといったスイーツ系ドリンクも人気で、甘いもの好きにはたまらない。
店内の雰囲気は、年配の客から若いカップル、一人で読書する人まで、多様な客層が楽しめる。土曜日は16時頃には満席になることもあり、予約をした方が安心。カウンター席は7席、オープン席は27席あり、個室はなし。静かで落ち着いた空間なので、デートや友人との会話にも適している。特に、ピアノの音が流れている時間帯は、時間がゆっくりと過ぎていくような感覚になる。また、店内には小人のカフェのようなディスプレイや色違いのカップが並んでおり、小さな発見が楽しめるのも魅力の一つ。
お店の歴史は1976年に遡り、老舗として知られている。創業当時は今とは異なるスタイルだったかもしれないが、今ではアンティーク調のインテリアやクラシックな雰囲気を維持しながらも、電子マネーの利用も可能。これは、伝統と現代の融合を象徴しているような気がする。また、メニューには豆の個別販売もされており、コーヒー好きにとっては嬉しい情報だ。ただ、支払いは現金のみなので、現金を忘れずに。
このカフェの最大の魅力は、なんといっても「時間」を大切にできる空間だ。都会の喧騒から離れて、静かな音楽とコーヒーの香りに包まれながら、心を落ち着かせるには最適。1日の中で1時間でも、ここで過ごす時間は特別な時間になる。老舗の味と、今どきの工夫が融合したこのお店は、東京を訪れたときにはぜひ訪れたい場所の一つだ。特に、コーヒーが好きな人や、落ち着いた空間で読書や会話を楽しみたい人には、おすすめのスポットだろう。