小田原市にある小さなカフェに偶然足を踏み入れた日のこと。入口が分かりづらいし、営業時間も明確でないけれど、その異質な雰囲気で惹きつけられる人は多い。店内に入ると、時計や古い電話、タイプライターが並び、まるで昭和の時代にタイムスリップしたような不思議な空間が広がっている。写真撮影も可能だが、他の客やスタッフが写らないように気を配る必要があるという話も聞いている。でも、そんな手間を厭わないほど、このカフェの魅力は強い。
コーヒーを注文した際、イタリアンコーヒーが出てきたのは驚きだった。エスプレッソのような濃厚なコクと香りで、酸味はほとんど感じられない。バニラケーキも人気で、ヴァニラビーンズの香りがほんのり香るチーズケーキだった。生クリームの甘さが程よく、スイーツとの相性もバッチリ。他の客も静かに時間を楽しんでいて、まるで誰かの隠れ家のような雰囲気だ。
店内には昔の漫画や小説が並んでおり、その中の一つに『チョコレイ時計器』という名前のケーキがあるらしい。レトロなアイテムが目を引く中、このカフェの持つ個性はさらに際立つ。時計が壁や天井に飾られ、秒針のチクタクという音が静かな店内を包んでいる。この時間の流れが止まったような空間で、自分だけが特別な時間を過ごしているような錯覚に陥る。
「レトロが好きなら絶対おすすめ」という声も聞こえてきたが、集合体恐怖症の人には少し怖いかもしれない。でも、そのレトロな雰囲気は、心を癒やしてくれる魔法の場所にも感じられる。オーナーさんに許可を得て写真を撮った人もいるし、深煎りコーヒーの味はまさに自分好みだったという感想も。このカフェに訪れた人は、それぞれの思い出を刻み込んでいる。
訪れれば必ず心に残る場所。レトロなアイテムが並ぶ空間に、コーヒーの香りが混ざり合う。時計の音が響く中、ゆっくりと時間を味わうことができる。次に訪れるときには、プリンに挑戦してみるのもいいかもしれない。そんな、心地よい時間の流れがここにはある。